2011年1月29日土曜日

第2回トライアルワークショップ「未来を作ろう」後編2

さて、先ほどのエントリー記事に続いて紹介する未来像はこちらのお題です。

「2030年、教育の現場ではどのような科目を教えているのでしょうか?どれくらいの年齢で教えているのかも添えて教えてください。」

このお題でのテーマ「教育」の未来像を考えてくださったのはこのグループです。




笑顔がこぼれ楽しそうなご様子です。



さて、こちらは紙芝居形式にシーンを沢山イラストにしてくださったので、先にこのグループの「教育」の考え方を追っていくことにしましょう。

ツイートの傾向を見ると、2030年は「座学」(座って受ける講義形式の授業)以外に2つのスタイルの授業が増えるのではないか、という見方をしました。それは、

●実践を重視する形式の授業
●人間関係の構築につながる授業


です。

そこからこのグループは2030年の教育のテーマを「人間関係の形成」「主体性を伸ばす」の2点に置きました。

しかし、人は誰でも「苦手だな」と思う人とはあまり関わらないようにしたがりますし、仲のいい人とは逆にいつも一緒にいる傾向があります。また、主体性というものも、勝手に生徒たちに任せていれば伸びてくる、というような簡単なものでもないでしょう。

そこで、2030年の教育は、この2点に焦点をしぼった上で、それらを「教育においての管理体制の下」行なう、というスタイルを考えました。

一見すると、主体性を促すのに管理体制を敷くのは矛盾しているように思えますが、主体性が誰でも自発的に実につけられるものではない事を考えると、主体性の促進自体は管理しながらやらせていかなければ実現しない、という事ですね。










さらに、この考え方は基本的にはツイートに基づいて作った考え方です。したがって「社会みんなの意見の傾向」という言い方ができます。教育方針の軸は、こうした社会のみんなの意見をもとに作った、という設定になっています。

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さて、それではこの2点の軸での教育の例を、写真とともに見てみることにしましょう。設定は小学校です。

まずは1点目「実践を重視する(主体性を伸ばす)授業」です。

case 1. 『お母さんに伝えよう!』

今問題視されているものの1つとして「モンスターペアレント」の問題があります。この問題は20年後も対応しなければいけない問題であろうと考えます。ではモンスターペアレントはなぜ生まれるのでしょう?このグループではその解の1つとして「子供が断片的な情報を伝えるから」ではないかと考えました。

例えば、給食である子だけカレーライスの具であるお肉が3切れしかなかったとしましょう。他の子は4切れあるのに。

給食係も悪気があってやったわけじゃないこの出来事を、この子が親にこう伝えたとしましょう。

「給食のとき、他の子は皆お肉4切れだったのに、僕だけ3切れしかもらえなかった!」

これを聞いた親は、「うちの子、いじめられているんじゃないの?」と思ってしまう。配分にわずかな差が出来てしまったという事実だけを聞いたからです。そしてこの子の発言自体もこの子の気持ちが移入されてしまっています。

こんな事を聞いた親はどうするか、というと・・・そう、学校に乗り込むわけです!「うちの子はいじめられています。学校は把握しているのですか?どう対処してくれるのですか?」と。

さて、ではこの問題を20年後どう解決するか、というと、2本柱の1つ「主体性を伸ばす」にかこつけるのです。具体的にはこちら。

そう、何と「お母さんへの伝え方の実践練習」と位置づけてしまうのです。でもこれ、かこつけてるだけじゃなく、実際社会でも役立つはずなんです。人に物事を伝える、というのは一見簡単な事ですが、人伝いに情報が伝わるにつれて枝葉がつくように、伝言ゲームで物を正確に伝えるのは実は非常に難しい事なのです。必要な事を的確に相手に伝える力、これを学校教育で教えていこう、ということで、その手始めに「お母さんへの伝え方」を学ぶ、というわけです。

生徒達には「~~~と伝えるのですよ。では実践練習です。今日おうちに帰ったら早速お母さんに伝える練習をしてみて下さい。」と伝えます。そう、主体性を促す授業にしか見えませんよね?しかし実際にはモンスターペアレント対策にもなっている、というわけです。

case 2. 『情報選別能力を身につけよう!』

必要なもの/そうでないもの、正しいもの/正しくないもの、色んな情報があふれるこの情報社会。20年後はそれがもっと加速している事でしょう。そんな社会において必要となるのは「情報を選別する能力」です。知りたい情報がどこにあるかを探す能力も大事ですが、見つけたその情報が正しいかどうかの能力も見につけなければなりません。

そこで2030年には、情報選別能力をつけるための授業が行われます。そして、その授業にはゲスト講師がいらっしゃいます。そう、あのGoog〇eの方です。2030年は社会ぐるみで、社会に出て恥ずかしくない人材を小学校のうちから育てようという方針が見え、それゆえ産学協同で教育を行なっていくという考え方になっていくのです。




その代わり、検索の練習などではgoog〇eを使う、そしてgoog〇eの「自分たちの教育を助けてくれた」というイメージを持ってもらうわけです。win-winの関係が作り出されるというわけですね。





case 3. 『お買い物も教育。食も教育。』

例えば算数。こんな感じで問題を出されるよりも、実際にリンゴを買って実際に食べてみればよいわけです。理科の実験みたいに、やってみたほうが印象に残るし一目瞭然だよね、という話ですね。

そうそう、この例にはまだいいことがあって。。。

この子、残ったリンゴの芯を見て、これを0個と数えてよいのか、これも1個なのか、・・・などと悩んでいます。やってみて初めて出てくる疑問。そしてそもそもそのようなものに自分から疑問を抱く頭になる事。これもこの教育が目指しているところです。


あ、そうそう。もしモンスターペアレントがこの教育方針に疑問を持ったとしましょう。しかし、その教育は社会の声を反映させて作った軸に基づいているわけです。

「政権交代を支持した投票者にも責任がある」のと同様、その教育形態を支持した社会はこの教育を不満に思ったとしても学校や先生に不満をぶちまけるのはお門違い、というわけです。

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さて、それでは「人間関係の構築」に力を注いだ授業内容も少し見てみましょう。

case 1. 人間関係をデータベース化
2030年は技術の進歩により、日常的に誰が誰とよくくっついて話しているか(とその逆)などの傾向を分析してデータベース化することができるようになります。

そして、心理学的見地からも「この2人はうわべでは仲良さそうに振舞っているが実は仲はよくない」などといったことが技術的に読み取れるようになり、それらもデータとして蓄積されていきます。


そうすると、「誰と誰が仲が良い」「誰が誰を好き(or嫌っている)」「誰と誰は普段仲がいいが今はケンカ中」「誰と誰は気が合うはずなのに、クラスや席が一緒になったり近くなったりしたことがないからあまり話したことが無いという理由だけでまだ仲良くなっていない」といった事がデータで溜まっていきます。

これも「強力な管理」の一種ですが、これもここまでデータを採取している事は敢えて生徒達には教えません。2010年現在以上に伸び伸び学校生活を送ってもらうためです。

case 2. 席や班決め
データは席や班決めに使います。仲のいい人達同士で班を組ませるのではなく、まだ一緒の班になったことの無い人たちや、仲がいいんだけど喧嘩中の人たち、そして時には敢えてお互いあまり好きではない同士も同一班にしてしまうのです。

社会に出れば自分と気が合う人と仕事が出来るとは限りません。時には取引先や上司で「いやーな」人がいても、上手くやっていかなければいけないわけです。その訓練を教育で学ばせ、人との付き合い方を学んでもらうわけです。


case 3. 主体性に組み込む
先ほど話に触れた主体性にこの人間関係構築の話を組み込むことも考えられます。
例えば、A君はB君とあまり気が合わないと思っているとしましょう。教室内センサーでそれをデータとして読み取った場合、A君に「今週の宿題」として、「B君と一緒に2人で帰宅する」などといった課題が課されます。まぁ実際はこんなあからさまな課題の出し方になるか、は別問題ですが・・・


このように「学校外」でも教育はされていくようになるし、そこで「人間形成」もなされます。さらに、その宿題の成果はなかなか学校側は捕捉しづらいわけですから、リュックサックにセンサーを埋め込むなどして、その様子を把握できるようになるとよりよいです。もちろんそれは生徒には内緒。

これも強力な管理の1つです。一見すると「そんな教育いいのか?!」「許されるのか?!」といった意見も聞かれそうですが、それは最後までネタばらししないで、このような管理を、管理と見せず、さりげなく「B君と一緒に帰ることにしよう」と先生が生徒に唆す。そんなことが出来れば、生徒は伸び伸びやれて主体性を伸ばしてもらっている、と思えることでしょう。

裏を知るとショックかもしれないけど、「裏」を知れるのはせいぜい大人になってから。そして、大人になったころにはその教育方針の意図が汲めるほど頭も大人になっているわけですから、今さら反対しないだろう、というわけですね。

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さてさて、最後に成績について軽く触れましょう。こんな教育体制になった場合、成績はどうつけられるのか?というのは考えねばならない点なのですが、2030年の成績表はこのグループはこんな感じになるのではないか、と考えました。


今まで通り5段階評価などの成績はつきます。しかしそれだけにとどまらない成績表が出来るのではないか、とこのグループは考えています。

例えば図中の右上の折れ線。これは、その人が誰とどれくらい会話しているか、や、普段昼ごはんは教室のどのあたりで(=誰と)食べる事が多いのか、など、色々なデータを開示しています

そして下でアドバイスを出しています。これはあくまでプラスな事を言う欄。でないとデータベース化に関してよい印象を生徒達は持たないですからね。このようなアドバイスが出来るのもデータベース化の利点と言えます。

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以上が「教育」グループの未来像です。

なかなか尖った未来像に仕上がったな、という印象で、賛否両論に非常に分かれやすそうな内容になったと思います。しかし、ただこの「像」だけを見て意見するのではなく、その裏にある思いや目的まで汲んでみると、納得できる部分もあるのではないでしょうか。

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