2011年1月29日土曜日

第2回トライアルワークショップ② 後編

1月22日(土)に行なわれた第2回ミライプロジェクトトライアルのワークショップを慶應大学三田キャンパスで実施しました。

第2回トライアルでは計6つのお題でご意見・アイデアを募集しました。今回のワークショップではそのうち4つのお題の未来像を作りました。

今回は我々慶應大学武山研究会の学生ではなく、トライアルにご参加いただいた外部の方々にお集まりいただき、未来像を考えていただきました。トライアル中に集まったツイートを使いながら、この方々の考えも交えて未来像を作っていく、ということを行ないました。

今回は「後編」としまして、そのうち2つのお題の未来像をご紹介しようと思います。

最初のお題はこちら:

「今から夕食の時間です。どこで何を食べますか?」










そして、このお題に対しての未来像を描いてくださったのはこちらの方々です。










完成した未来像を発表している様子です。











では、どんな未来像になったのか、ご紹介いたしましょう。

集まったツイートを見てみると、夕食の食べ方についての考えは人それぞれ。皆で食べている人もいれば1人で済ませる人もいる。家で食べている人もいれば外で食べている人もいる。いつものメンバーで食べている人もいれば食を通じて新たな知り合いを作る事を考えている人もいる。

そんなツイート状況の中、このメンバーはどのように未来像を作ったかというと・・・

『食事の取り方・位置付けは人それぞれ!だからそれが活かせるような像を作ろう!』

非常に興味深いことに、このメンバーは、ツイートのうち多い傾向のものを採用したり、どれかの方向に絞ったりするのではなく、多様性をそのまま残して未来像を作っていきました。そして完成したのがこちら!











ちょっと見ただけではおわかりいただけないかもしれませんね。説明をしていきましょう。

今載せた図は「田中家」という、2030年のごく一般的な家族(家系)の図です。この田中家を例にとって、このグループは2030年の食の未来像を考えてくださいました。

まずお父さんとお母さんですが、2010年現在「中年」くらいの年齢で、東京でまだバリバリ働いているような人です。従って2030年には60~65歳くらい。まだ東京のマンションに住み続けていますが、仕事は定年退職しています。

20年後は食べるものはそこまで変わってはいないけれど、それを手に入れる手段やバリエーションが変わっていきます

この夫婦は、食材をデリバリーしてもらい、届いた食材を料理して食べている、というのがよくある夕食風景になっています。

2010年現在、「家族での団欒の食事」という食事形態が家庭において薄れてきている中、2030年には「お茶の間の共有」が行なわれます。今でいう「シェアハウス」のようなスタンスですね。作ったものをみんなの「共有食卓」に持っていき、作ったものを交換したりしながら夕食を食べるという食べ方が出てくるのではないか、ということです。

このようにして、今ではかなり廃れている「ご近所づきあい」が一つの復活の形を見せ始めます。

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さて、そして子供たちに話を移しましょう。

まず息子はかなりの田舎住まい。2010年だと「田舎で農業」という考え方になりますが、IT技術の発達などで「在宅ワーク」がしやすくなってきます。つまり、都会に住む必要も無いし自分の足で色々なところに行く必要もなくなっているという状況です。

すると人はどういうところに住むか、というと、ごちゃごちゃした都会ではなく、空気が綺麗で自然にあふれている「田舎」や「地元」、また自分の好きな所などに住むようになるわけです。

この息子夫婦は共働きですが、2人とも基本はデスクワークなので、(通勤などの時間もない分)比較的ゆったりした時間(仕事)を送っています。つまり、時間的な余裕も生まれるわけです。そこで、「せっかく田舎に住んでいるのだから!」ということで、この息子夫婦は裏庭に小さなビニールハウスを作り、野菜を生産します。これも一種の「兼業農家」ですね!世界を股にかけるバリバリITマンであり、農家の人でもある、という、今だとかなり「異色」な掛け持ちです。

このような野菜も自分たちの食卓に上がることもありますし、東京に住んでいるお父さんお母さんにあげたりもします

さて、この息子夫婦には子供が2人います。この息子夫婦は在宅ワークとはいっても仕事が立て込む時期というのがどうしてもあります。そんなとき、8才と6才の子供たちに料理のお手伝いをしてもらいます。

「8才や6才の子供だけに料理を任せるのはまだ不安」と考えるのはもう古い!2030年には、料理中に調味料を入れるタイミングや、工程を間違えたときの指摘をして(教えて)くれるコンピュータシステムがあるので8才や6才の子供でも安心して料理が出来るわけです。

他にもこのコンピュータシステム、色んな事をしてくれます。例えばメニューをおすすめしてくれる機能。これにレシピまで教えてくれれば、新たなメニューも簡単に出来てしまいます。

さらに、毎日の食事の記録をログとしてとってくれて、そのデータを分析して栄養の偏りなどを警告してくれる機能もあります。

つまり・・・

料理は自分たちでしており、食材も自分たちが調達するのだけど、管理・提案をしてくれるシステムが新たにできる事により、2010年以上にバラエティ豊かな食事メニューを簡単に家庭で楽しめるようになる

というわけです。

そしてさらに、それがSNS的につながっていると、お父さんお母さんとのつながりもただ「食材を送る」だけの関係にとどまらなくなります。お父さんお母さんはジャンクフード志向だったとすると、2030年(60~65歳くらい)になってもまだハンバーガーなどのジャンクフードを食べていることが考えられます。すると、栄養面などから、ネットワークを通じて子供たちが親に栄養のあるヘルシーメニューを提案してあげたりすることが出来るようになります。

そして、送った食材を使ってせっかくなので、“一緒に”食事をします。もちろん東京暮らしと田舎暮らし、物理的な距離は相当あるので直接会って食事するのは簡単な事ではないですが、20年後技術が進んだAR(拡張現実)技術により、お互い遠い距離で各々の家にいながら、一緒に食卓を囲んでいるかのような仮想空間を体感する事ができます。

家族だけでなく、都会で働いている親友ともバーチャル飲み会を行なう事もしばしば。今の「家飲み」とは違って、家なんだけど外で飲んでいる感覚を味わうことができ、大満足です。そうそう、実はお酒が弱いこの息子、酔っ払ってへべれけになっても実際には「家」で飲んでいるわけなので、家まで送ってあげる心配はいりません。もう家にいるのですから。

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一方お父さんお母さんのもう1人の子供、娘はというと、こちらは未だ独身。バリバリ働いて稼いだお金は趣味につぎ込むタイプです。

この人は旅行、とくにアジアへの旅行が趣味で、パクチー料理に今はまっています。そこで、パクチー栽培を兄に頼んでしてもらって送ってもらいます。

ここからが更に新しいのですが、兄から送ってもらったパクチーを妹は全部自分で消費するのではなく、旅行コミュニティなど、自分が所属しているコミュニティにおすそ分けします。しかもただもらったパクチーや、それを使って作ったパクチー料理を渡すだけではありません。こういうコミュニティがこぞってご飯を食べれる「イーティングスペース」をレンタルするビジネスが2030年にはあり、厨房を使わせてくれます

妹はこのコミュニティのメンバーと集まり、自分がよく行く地域でよく食べるパクチー料理を再現し、皆に振舞います他のメンバーたちも自分のお気に入りの他国料理や最近行って食べた他国料理を振舞うスペースになっています。つまり、

世界の食卓を趣味で共有する

ことがなされるわけですね。


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さらに2030年には非常食や栄養補助食品も進化を遂げています。カロリー〇イトやウィ〇ーインゼリーなども味はもちろんのこと、これさえ食べれば「10秒チャージ2時間キープ」どころの騒ぎではない「キープ」ができるようになります。これで、忙しくて食事時間すら惜しい人も、それなりの満足の味で1日もっちゃうようになります。

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さて、まとめてみましょう。

2030年、「食べ方」というのは大きく項目立てをすると次のようになります。
●自宅で食事。2010年の今と似ているが、食材調達やデリバリーなどは今よりもたやすく、頻繁に行なわれる。
●「ご近所シェアハウス」がある。お茶の間やちゃぶ台自体を共有しているかのごとく、近所にすんでいる人たちが顔を突き合わせて食材や料理を持ち寄る。ここには1人暮らしのご老人なども、社会とよりつながっていたいという理由で数多くいる。今薄れている「ご近所づきあい」や「おすそ分け」の復活とともに、孤独死問題などの解決にもなる。
●田舎で食事。ただ田舎で農家をしてそこで採れた食材で料理するだけでなく、メニューの提案や栄養管理、レシピや調理法の注意・ワンポイントアドバイスのようなこともしてくれる。
●家にいながら、遠くの人とAR技術などで一緒に食卓を共にしている感覚を持てる。今までよりも気軽に友達を食事や飲みに誘えるようになる。(←場所の問題が解決されているから)
●コミュニティで食事。料理を提供するのではなく料理・食事スペースを提供するサービスがはじまる。厨房を使って、持ち寄った食材で自由に料理をし、コミュニティ内で料理を振舞い合う。
●食事している時間も惜しいほど忙しい時は、進化した栄養食を少し食べるだけで、1日はもつ。今のように「バリバリ」働く人のつよーい味方。


こんな感じですかね。

ふー、だいぶ長くなりましたが、やはりこのように数多くの食事形態が出てきたのは、
●食事に求める事が人それぞれ違うから。
⇒食事をただの摂食行動としかとらない人(食事より仕事が大事と思っている人)もいれば、食事は食を介して人とのコミュニケーションをはかる重要な場ととらえる人もいる。だから今回の例のように家族でバーチャルに“一緒に”食事をするケースも増え得るし、進化した栄養食で済ませる人も出てくるのだろう。
●食事選択が易化するから。
⇒ひとつはデリバリーなどのニーズの高まりにより、ほしい食材をすぐデリバリーしてもらうのが普通の文化になっているであろう、ということ。そして、AR技術の進化などで、バーチャルに顔を合わせることができるようになるおかげで、物理的な距離が理由で一緒に食事できない、という問題を解消してくれるであろう、ということ。この2点が大きいだろう。


といったまとめが出来るのではないか、と思います。食べ方への多様なニーズを満たす環境が整い、そして個人に届くサービスが充実していくのではないか、ということですね。さらに、多様なビジネススタイルとの両立もキーワードなのかな、と感じました。

また、注目したいのは、この話題は「食」に限らない、ということです。あまり気にせず文字にしましたが、「そもそもお父さんお母さんは本当に65歳で定年を迎えるのか?!」といった問題や、「小学生が料理しているが、小学生の教育はどうなっているんだろう?」といった問題など、他の問題と複雑に密接にかかわりあっている問題であると感じました。

長くなったので2つ目のお題の結果(未来像)は別エントリーで掲載させて頂きます。

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