2010年6月25日金曜日

二十年後の我が家を覗いてみよう ~本紹介・トイレ編~

今週はミライ班は「強化週間」となっており(いや、なってしまっただけですが・・・)、奈良へのNECさん(註:NECさんが私たちのクライアント)訪問をはじめとし、ゼミ関係のイベントが盛りだくさんの中、来週から班内+一部ゼミ生でのプレプレトライアルに向けてパラレルタスクをこなしている、といったところです。

そんな中今日はミライ書籍『二十年後 くらしの未来図』(平尾俊郎著 新潮新書)のレビューを書いてみようと思います。とはいっても・・・

この本、かなり面白いので、何回かに分けて書こうと思います。(1回では書きたいことが書ききれない!)

【この本の構成】
この本のコンセプトは「二十年後の我が家を覗いてみよう」となっています。つまり、我々の目の前(=普段の生活)に現れるものじゃない技術的な未来予測ではなく、一般のサラリーマンや家庭を預かる主婦でも読むことができるような内容で書かれています。

この着眼点はとても大事で、もちろん「書籍」という観点から考えても同じことですが、結局読み手が共感できないような内容や着眼点から書かれても読み手は理解が及ばない、ということです。では読み手がイメージしやすい、わかりやすい着眼点はどこか?といえばやはり行き着くところは「未来の暮らし」になるわけです。(実はこの班のお題設定の議論でも「未来の暮らし」という着眼点は非常に大事であると考えています)

その内容は、というと、「未来の我が家」と称して、普段の生活に関わるシーンごとの未来を考えていく、という形式をとっています。例えば「未来のバスルーム」「未来の生ごみ」「未来の防犯」のように。

本日は本の紹介もしたので、長くなってはいけないので、そのうち、未来の「トイレ」についてご紹介しようと思います。

また、お読みの際には、この本は2004年(今から6年前)に書かれたものである、ということも頭に入れてお読みいただけるとよいかと思います。

<未来図① トイレ>
[トイレは“健康トイレ”へ?]
東京は有明(お台場)にある「パナソニックセンター」に、近未来のライフスタイルショールームを展示する「Future Life-Style Lab.」というところがありました。(※2003年クローズ)

ここでは2005~2010年という近未来の暮らしをショールームの形でディスプレイしていたようで、そのうち、トイレエリアには「健康トワレ/健康チェッカー」というものがありました。

これは、便器に座ると体重・体脂肪率を測定し、用を足すと便をその場で検査にかけ、異常があるかないかを提示し、ある場合はそのデータがそのままかかりつけドクターのもとに送られる、という仕掛けになっています。

実際、尿をノズルにあて、尿検査を行うトイレは実装されており、トイレがただの排便器ではなく生活習慣病をはじめとした病気への予防の最前線となる日も遠くない、という結論になっています。

[トイレの進化にも不況の影が・・・]
トイレの劇的な進化のポイントといえば、「和式⇒洋式」への変化(洋式トイレの一般化)、ウォシュレットの誕生、と言えます。

そんな中、企業のトイレ開発部隊は今何を開発しているのか?その答えは「健康トイレ」というよりも「節水トイレ」でした。不況から、いかに流す際の水量を減らすか、を開発ポイントにしているようです。

[無臭トイレの時代が来る?]
トイレメーカー最大手として知られるTOTOは、光触媒効果研究のトップランナーでもあるそうです。光触媒に光があたると、除菌・抗菌効果を生み出したり、汚れを浮き出したりすることができます。その効果をトイレでも発揮させられないか、という著者の問いに、TOTO担当者は「室内光では光触媒の反応は弱いので、その点を解決できれば実装も夢ではない」とのことです。

におわないトイレ、汚れていかない便器、健康チェックの場・・・この先トイレに「不潔」という感覚が消える時代が、もしかしたら来るかもしれません。

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さて、最後にこの本の特徴をもう少し挙げてみましょう。

この本ではただ「未来のトイレはこうなる!」「未来にこんなトイレになったらいいなぁ」という筆者の頭の中の世界だけが書かれているわけでは決してありません。「なるほど、確かに未来はこうなっていくかも」と思わせる書き方がされています。その特徴を挙げてみます。

特徴①「未来を知るには過去を知れ!」
温故知新的考え方とでもいいましょうか。例えばトイレなら「和式」の時代にまでさかのぼって、そこから起きた進化を考えていき、その流れを加味したうえで「じゃあ将来どうなると考えられる?」という推測をしています。

特徴②「データを出す」
ただ「過去はこうだった」とか「今こうである」というのではなく、その傾向を数値化したり、実際の数値を出したりして、傾向に説得力を持たせたり、未来にこうなるという推測を強固なものにしたりしています。

特徴③「商品や展示会をくまなくチェック」
筆者は、今ある商品や、そのような商品の展示会・ショールームなどをくまなくチェックし、「未来のタネ」(:未来に主流になっているであろう特徴で、現代見受けられる一片)探しをしています。

特徴④「専門家に意見を聞く」
ただ筆者の推測で章を閉じるのではなく、その意見や未来展望をその専門家に聞き、その返答や意見も載せています。

我々はミライ班としては、「この未来は実現しそうかどうか」という分析よりも、「どうやったら『確かにミライはこうなりそう!』と思われる提示の仕方ができるか」という観点からの分析をしていくべきではないか、と考えています。要は「そんなのこの人がただ思ってるだけじゃん」といかに思われないようにするか、ということですね。

次回のエントリーでは引き続きこの本の続きを書いていこうと思います。